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空ゆく月 其の初 [未だ描かれざりし物語の本棚(習作置き場)]

どうにか冒頭が出来上がりました。
当初、三題噺のお題を頂きまして、妄想していたら
膨れあがって違う方向に行ってしまいました。
三つとも一応こっそりと入れてあります。因みに 夏・ひまわり・麦わら帽子 。

拙いですが、どうか見てってください。


題名

 『空ゆく月 其の初 ”遭逢”』

.
.


 冷房のあまり効いていないバスの中は昔の記憶と遜色なく、左右一列に並んだ椅子には疎(まば)らに、夏目悠人を含めた数人が乗っていた。
 床は板張りになっていて、揺れる度にギシギシと壊れそうな音を時折立てながら走行している。
 窓からの景色は、山に入ってからは周りを木々に囲まれ、代わり映えのない視界が遮り続け、すぐに飽きた。
 眺めていても同じ雑木林が続くので、乗っている時間を長く感じる。
 それでもバスは進んでいく。
 急に窓からの視界に木がなくなり、空が現れてバスの前方には川に架かる橋が見えた。
 その橋を渡る手前の停留所が目的の場所の入り口にあたるので、押していなかった降車ボタンを押し、下車をする。
 ここで降りるのは夏目悠人だけだった。
「昔と変わってないな」
 ――遠野村。そんな名前だった。
 木製の停留所を示す物に付いている時刻表には、一・二時間に一本のみ運行しているだけだった。
 降りて直ぐ夏目が感じたのは、今にも迫ってきそうな山に囲まれた風景、夏の日差しと蝉や鳥の鳴き声の刺激。
 約十年ぶりに見る風景は記憶の中の映像を、そのまま現実へ再構築しただけのように感じていた。
 これなら多分行った事のある道には、迷う事はないと思った。
 道はなだらかな一本道になっていて、先の先まで見渡せる。
 走る車はなく道路には、逃げ水がゆらゆらと幻ように揺れていた。
 道路の左の方には昔、唯一買い物をした店が時間が止まったみたいに、変化なくまだ経営している。
 右側には斜面を遮るガードレールがあり、堤防のような役割をしていて下までは30メートルくらいはあった気がする。
 川の対岸まで距離があるが、無理に近づいてまで見なくても大小様々な石や岩が敷かれた河原があり、そして緩やかに水が流れているのが見える。
 前に来たときは水鏡と銛(モリ)で鰍(かじか)を捕った事を思い出す。
 今でもいるのだろうか? いつも先陣を切っていたアイツならやろうと、誘うかも知れないとそう思った。
 ――忘れずに来ていればの話か。
 川の対岸には断崖のように高く聳(そび)えていて、川と平行して並んでいる。
「っと懐かしさに見とれてないで先を急ぐか」
 目的地に着いても、誰もいない可能性がある。
 そんな儚い口約束だった。
 多少の不安を振り払い、夏目は帽子の被り直し背中のリュックを軽く跳ね上げようにして、位置を整えてから歩き始めた。
 少しすると、道路の左側には白いコンクリートの建物がある。
 道よりも一段下がって出来てる白い通路みたいな所や、こちら側の壁は窓やドアがない。記憶の中のよりも廃屋のように色褪せていた。今見ても何のために建てていたのかさっぱり分からなかった。
 どうせ使われなくなった建物だ。別段気にしない事にした。
 全く行き交う人や車にも会わすに、歩く事10分経っただろうか、林の隣に開けた小さな空き地が見えてきた
 古さを感じさせる錆びた鉄棒や二人分のブランコ、そしてベンチがある場所が見えてきた。
 ここが集合すると決めていた公園だったと夏目は記憶を出そうとしたが、こんなに狭くて古びていたのか驚いた。本当にここなのかと、心許なく感じてしまう。
 けれどもそんな気後れも一瞬の事だった。
 林の中から一人の女性が現れて、こちらに気付くことなくベンチの方に向かって歩いて行く。
 白っぽいワンピース風に鍔の短めの麦わら帽子を被り、束ねてある長い黒髪が歩く度に背中で揺れている。ゆっくりと辺りを散歩しているかのようにも見えた。
 他にはいないのか地元の人なのか、考えながら近づくにつれて、ベンチには大きめのスポーツバッグが置いてあり、その横の地面には黒を基調とした小さめのスーツケースも置いてあった。
 荷物の量が多いから遠くから来た、という風に思えた。
 間違えても構わないから声を掛けようか? という考えの途中で、相手も公園に来る夏目に気付いたのか、こちらへ振り向いた。
 何て声を掛けようかと考えるにしても、声が届く距離まであと数メートルしかない。無理矢理方向転換するのも変だとか、余計な事を考えているうちに、仮に知り合いにだったら声をかけないと変な距離まで近づいてしまった。
「えっと一人?」
 第一声がこれだった。
 使い古され、昔の文献にしか載っていなさそうな、ナンパで使うセリフだと後悔し、猛烈な反省と気恥ずかしさがこみ上げてくる。
 案の定、彼女は怪訝な顔をしていたが、彼女の目が少し大きく開き、
「もしかして、悠君?」
 ユウクン? ……悠君。あまり呼ばれた事のない呼び方だったけど俺のことだろう。というとは、彼女はここで知り合った誰かだ。
 誰だっけ? 思い出せー。
 怪訝そうな顔は、俺が名前を思い出そうとしているからに違いない。
 昔の記憶から名前を思い出そうと努力した。
 でも、喉に引っかかってるのか名前が出てこない。
「私、椎奈。若草椎奈、覚えてない?」
 僅かな時間が長く感じられるほど焦ったけど助かった。
 思い出した。
 地元の人でしたオチじゃなく、ここに集合しようと約束した一人だ。よかった今日で合っていたんだ。間違っていたらどうしようかと心配していたのが嘘のように瓦解した。
 それにしても、荷物の量を見るに一人にしては多すぎる気がする。
 姿は見えないけど他にもいるのか、もしかして俺が一番最後かと考えながら忘れていない事を口にした。
「も、もちろん覚えているよ。でも、どっちだったかなってちょっと思ったんだ。……他の人達は?」
 確か女性は二人いたはずだと思っていたからだ。男は、俺も含めて三人だった気がする。でもまぁ男の数はどうでもいいか。
「誰も居なかったから、少し前に到着した私達二人が最初みたい。あと彦乃はさっきまでここにいて、カメラ片手に写真撮ってたけど、風景に誘われるままにどこかへ行ってしまったわ」
 山の方を見ながら、呆れたような困った顔をしながら言った。
 彦乃とはもう一人の女の子のことだ。
 やっぱり再会してみると、モノクロだった思い出が鮮明な色を成していくみたいに感じられる。
 川のせせらぎはここからは聞こえない。
 小さな公園から聞こえるのは、木々のざわめきや鳥のさえずりは何となく懐かしいから、きっと色々と見て回りたいのだろう。
 みんなが集まってからでも遅くはないだろうとも思った。
 一応の目的地に着いたので、背負っていたリュックをベンチ近くの地面に降ろし、ブランコに腰掛けた。
 知り合いにあったといっても、昔一度遊んだきり全く会ってないから、完全に初対面に近い間柄だ。
 しかも相手は女性だから、何を話していいか分からない。
 何も仰々しい事を喋らなくても、昔の話を切り出せばいいんだと考え、話しかけようとしたとき、甲高い音が向かって来るように次第に大きく聞こえてきた。
 椎奈が視線を音の方へ向けたので、つられるように同じく振り向いくと、夏目が通ってきた道から疾走して来るバイクから出る音だった。
 赤と黒のカラーリングの50ccの原付に乗った人が向かってきていた。
 そのまま通り過ぎるかと思ったら、直接公園に乗り込み停止した。
 ヘルメットを取り、一息ついたその横顔はどこか見覚えがある。
「――もしかして相楽君?」
 いつの間にか夏目の隣に来ていた椎奈が声を掛けた。
 そうか陽生か。
 昔とは違い、髪を赤茶色に染めてるのが目に付く。気のせいか昔会ったというよりも、最近どこかで見かけたような気がする。
 相楽はこっちに向き直り、手を上げ喋ろうとした瞬間。
「ようやく全員集合だな」
 バイクに気を取られて、声を掛けてきた反対方向からの人に気付かなかった。
 出鼻をくじかれた状態になった陽生は、苦い顔をしながら声のした方を向く。
「オレの再会の口上を潰すなよな……。まあいいや、全員って四人だったか? 五人だったよな」
「あ、待つのが暇だからって、一人散歩に出てるの。もう少しで戻ると思うわ」
 陽生の次に現れたのは男で、眼鏡を掛けていて少し長い髪を後ろで縛っていて、夏なのに長袖のシャツに細身の黒いネクタイを着崩していた。まるで制服のように見える格好をしていた。年齢がもっと高かったらサラリーマンかなにかだろう。
 いつ戻ってくるのか、見当も付かないのを待つよりも、これからの行動を話した方がいいと思い、そのへんを切り出そうとしたとき、川の方から呼ぶような声が聞こえた。
 土手には階段があったことを思い出した。
「おーい! 椎奈ーって、みんな揃ってる!? 今行くから待ってて!」
 笑顔で手を振りながら向かってくる彼女は多分、七星彦乃だろう。
「これで全員そろったな」
 俺はそう言いながら、彦乃が来るのを待ち眺めていると、偶に感じるあの奇妙な感覚に襲われた。極めて短い先の未来が二重にずれて見え、現実の物より一瞬早く予見できるというものだった。
 現に今は彦乃が越えようとしているガードレールを出た途端に、左から車が来て……。
「危ない!!」
 左からの車に気付かず、道路を横切ろうとした彼女を止まらせるため叫んだ。まさに飛び出す寸前で止まり、そこを車が勢いよく走り去っていった。
 その後、左右を見ながらこちらへ渡ってくる彦乃は、少し恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。
「ごめーん。車に気付かなかったら、今頃空飛んでたね! ありがとう、えーっと夏目さん……だよね?」
「怪我しなくてよかった。序(つい)でにというのも何か変だけど軽く挨拶、オレは夏目悠人(なつめゆうと)。ただの高校生です」
 帽子を取りながらみんなに名告ってから被り直した。流石に直射日光をまともに浴びるのキツいな。
「偶然 ね。事故が起こる事のを予測阻止した感じだったが、まぁいいか。オレは相楽陽生(さがらはるき)。改めてヨロシク」
 夏目の肩に手を置き相楽は挨拶をした。
「あたしは七星彦乃(ななほしひこの)。趣味は絵を描く事や、写真を撮る事でーす! で、いいかな?」
 四人を撮りながら七星は挨拶をしていった。それを相楽は腕を組みながら見ていて、頭を僅かに捻りがなら何かを考えている風に見えた。
「お前って女だったのか? オレ、ガキの頃ずっと男だと思ってだぜ……」
 当の本人はそれを聞いて、口を開けながら驚き表情に悲しみを滲ませていた。
「えー! ……だから椎ちゃんと同じ扱いじゃなかったし、わたしのことをヒコって呼んでたんだね。もう間違えないでよねー」
 胸をパンパン叩く行為を見た男三人は視線を外していた。
 さばさばした行動していたから間違われていたのではないかと回想した。
「昔の疑問が解決したところで、次は私、若草椎奈(わかくさしいな)。もうすぐ誕生日を迎えます。あと彦乃とはあのとき別れた後も友達で、今日は二人で来ました」
 よく考えなくても、何故あのとき連絡先の交換しなかったんだろうと、疑問が頭を過ぎる。また集まろうとしてたのに、その間の交流とか思いつかなかった事が不思議だ。尤も女性陣はあれからずっと知り合っていたみたいだけど。
「最後に桐生蒼馬(きりゅうそうま)だ。特段言う事もないが、……みんな大きな荷物だね。何処か預ける場所か泊まる当てはあるのかい?」
 折角ここまで来たのだから、昔泊まった宿に今度も利用しようと思っていた。それにこれから行く所は時間的にも、日帰りの可能性が難しくなる時間帯だからだ。……いくら小学生だったとはいえ、集合を昼過ぎに賛成したのは単なる考え無しだろう。
「あたしと椎ちゃんは、前あたしが泊まっていた宿に、今日は泊まる予定できたんだけど、電話番号も分からなくて予約してないけど、ダイジョブだよね? 飛び込みでも」
「オレもそんな感じで」
 陽生に同意するように俺も首肯する。
 しかし、桐生は少し困った顔をした。
「それなんだが以前は確かに民宿があったな。でもこんな田舎だろ? 殆ど利用が無くなり廃業してしまい、宿の跡形も無くなり、そこには比較的新しい民家になってるんだ」
 そんな展開か! 泊まれる当てもない以上、日帰りか。
 バスの最終便は確か五時……いや四時半だったかな。時間を確認すると今は二時近く、ゆっくりとはしてられなくなったが、
「泊まるところが無いなら家(ウチ)に来ないか? とは言っても親族所有の小さな別荘の様なものだけどね」
 別荘? こんな場所に建てるなんて、どんな気まぐれだ? そうえいば蒼馬だけは荷物を持って無いし、村の奥から来たな。
「んじゃそこ決定だな。行こうぜ」
 陽生の意見に異論なく賛成みたいだ。
「そうか。ほら、ここから向日葵が咲いてるのが見えるだろう? そこにある」
 確かに蒼馬が指差した山方向には、ヒマワリの黄色い花の部分だけが覗いていた。



                                               続く

――――
次回は何故ここに来た目的や展開がある……とおもいます。
書き上がるのは神のみぞ知る出来るだけ早く、一月以内にはという希望ではあります。
でわー。。。
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